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■どの順序で消滅するか 

ただし、AIとロボットが人間の能力を超えるのには、順番がある。論理的には「足」「脳」「腕」「顔(表情)」「手の指」の5つの要素がすべて人間に追いついたときに、初めてAI搭載ロボットは人間と同じ仕事ができるようになる。 

この5つは各々異なる専門家が異なるロードマップで開発を進めており、開発スピードはあくまで予測の範囲でしかわからない。 

しかし現時点でフューチャリストはこの順序通り、つまり「足」「脳」「腕」「顔」「指」の順に人間レベルの機能が完成していくだろうと予測している。 

2035年にAIとロボットが仕事という観点で人間の能力を超えるのは、過渡的に「足」と「脳」そして「腕」までにとどまる可能性が高い。これは新発明で思いもしないブレークスルーが起きて変わる可能性はあるが、現時点での一定の根拠のある有力な仮説と捉えてほしい。 

シナリオにこのような前提を置くことで、人類が失業する未来社会の議論を深めていくことができるようになる。 

「足」「脳」「腕」の能力が人間を超越してしまった段階で、現在の人類の仕事の半分以上は失われてしまうだろう。 

■知的労働の大半はなくなる 

仕事消滅は最初にドライバーの仕事で起きる。2025年にまずそれが確実に起きる。 
そして2030年になるとパラリーガル(弁護士助手)、銀行の融資担当者、裁判官といった主に頭を使う仕事の中の「専門家の仕事」がAIに仕事を奪われるようになる。 

やがて2035年頃になるとより汎用的な管理職、経営者、そして研究者、クリエイターの仕事もAIにとって代わられるようになる。 

同時にロボットの足と単純な手の役割が人間に近づく。重いものを設置する仕事や、宅配業者の配達の仕事などが2035年頃にはなくなっていくだろう。 

2040年以降の世界に残された人間の仕事は何か? 

知的労働の大半はなくなる。そして人類に残された仕事の大半は、ロボットより優れた指先が必要な単純労働の仕事に絞られていくようになるだろう。 

このシナリオ通りにAIとロボットが発展すれば、2035年には、人類に残されたロボットに対する唯一の優位は「指先の器用さ」だけになる。 

たとえば2035年の世界では、パティシエが菓子を造形するような仕事が「高度な技能職」として世界で一番給料が高いレベルの仕事になるかもしれない。 

■マックジョブを人間が奪い合う時代 

もっと大衆的な仕事で言えば、コンビニの店員のように大量の商品をバックヤードから店頭に運んで陳列するような仕事は、指が未熟なロボットでは無理だろう。 

マクドナルドの仕事も有望だ。熱い鉄板の上にミートを並べ、焼き目をつけてひっくり返しながら、バンズにケチャップとマスタードをドレスして、その上にピクルスを載せる。 

手先が器用でなければそう簡単にはできない仕事だ。「スマイル」という、ロボットにはまだ難しい表情が重要な付加価値となる仕事も、2035年の時点では残されているだろう。 

日本の産業界ではマクドナルドの従業員の仕事のように、マニュアル通りに行うことで任務を達成できる仕事のことを「マックジョブ」と呼んでいる。2035年以降の世界では、人類に残されたわずかなマックジョブを、労働力人口全体が競うように奪い合う。そんな時代がやってくるのだ。
マトリックス 特別版 [ キアヌ・リーヴス ] 【【AI大失業時代】20年後の人間は「マクドナルドの肉焼き係」を奪い合う】の続きを読む